脱力したままの身体を起こし、私は片手で灯火の魔法を点ける。すぐ隣でぐったりと横たわっているアルマに目を向ければ、我ながら眉を顰めずにはいられないほどの痕があちこちに散っていた。
首筋に、鎖骨の下に、二つの丸い胸の膨らみの上に。なだらかな腹部から、寝返りを打てば背中にも同じものがあるだろう。自分でもいつつけたのかよくわからないそれらはローブを纏えば隠れてしまうが、こうして裸になれば私と何をしていたのかは実に明白だ。
彼女と愛し合うようになってからもうさほど短いというわけではないのに、この頃私はますますアルマに夢中になっているように思える。彼女がこのテル・ヴォスを訪れ、私の元へ会いに来てくれるたびに、私は自分の立場も忘れてアルマのことしか考えられなくなってしまう。
幸運にもアルマはテルヴァンニの家風に似つかわしくない常識人で、自ら私の気の緩みを忠告してくれるほど善良ではあるのだが、だからこそより一層彼女を私の元に繋ぎ止めておきたい。私の心の奥底に秘められたそんな邪な想いは、アルマを手に入れてもなおますます大きくなっていくばかりだ。
女を抱いたことがないわけでもあるまいに、彼女の前ではどうしていいかわからなくなる。触れれば最後、止められない。嫌がられるかもしれないと恐れていながらどこまでも貪ってしまう。アルマの甘い声が、柔らかい肌が、私を狂わせる。マスター・ウィザードたる私が、熱に浮かされたように彼女の名を呼び続けることしかできない。
「アルマ……っ好きだ、アルマ……!」
そんな陳腐な言葉をいくら繰り返し伝えてみたところで、息もつかせず抱かれている最中のアルマにまともな返事ができるわけもない。私が彼女の中へと滾った欲望を注ぎ込み終わる頃、愛しい恋人はいつもこうして気絶同然に精魂尽き果てて眠ってしまう。
疲れ切ったその顔と、まるで自分の所有物だと言わんばかりに散らされたキスマークを目にするたび、私はいつアルマが別れを切り出すだろうかと自問せずにはいられないのだ。
「私は君に酷いことをしているんだろうね、アルマ。でも……」
眠る彼女の頬をそっと撫でつつ、私は誰にともなく一人呟く。愛している。離したくない――例え彼女が私を拒む日が来ても。
「好きだよ、アルマ。本当に……君のことを、誰よりも愛してるんだ」
私は他人の愛し方など知らない。そんなものは大家で位を上げていく上では全く必要なかったものだ。嘘や偽りの睦言なら心を殺していくらでも言える。だが本気で誰かを愛したならば、それをどうやって伝えればいいのだろうか? 同じように相手に想われたいと望むのなら、どんな風に接すればいいのだろうか?
アルマがいつここに来なくなるかわからない恐怖に耐えられず、いつもこれが最後かもしれないと思いながら激しく彼女を抱いてしまう。祈るように愛の言葉を繰り返す。アルマの名前を呼びながら、この腕で閉じ込めるように強く抱きしめながら、私を愛してくれと心の限りに望まずにはいられないのだ。
「ん……ア……リョ、ン……さ……」
「!」
――その時、アルマが寝言で私の名を呟く。私が咄嗟に彼女の手を握ると、心なしかアルマは柔らかく微笑んでくれたように思えた。
いつか私の悲願が成就する時が来ても、彼女が隣にいてくれなければきっと私は完全に満足できない。アルマは既に私の思い描いている未来の一部なのだ。失うことなど考えられない。側にいてほしい。ずっと、私の側に。
「アルマ……私を必要としてくれ。こんな風にしか君を愛せない私でも……」
彼女の髪に口づけ、私は小さな声でそう囁く。アルマがその夢の中でも、私と一緒にいてくれるようにと願いながら。
