死が二人を分かつとも

「起きたか」  目を開いた私の前に立っている人は、特段驚いた様子も見せずにそう言った。たった今自分がかけた術が失敗しているかもしれないなんてことは、万に一つもないと疑いもせず信じきっているかのように。 「ええ、おかげさま … [Read more…]

素直になれなくて

 世の中には言ってはいけないことがある。それは万人に対してのものもあるけれど、ある特定の人物だけには絶対に聞かれてはいけない類のものもある。私はたった今、まさしくこの瞬間、後者を口にしてしまった。売り言葉に買い言葉という … [Read more…]

竜の血脈

 ある晴れた日、イヴァルステッドを流れる川にかかる橋の上に1人の男と1人の少年の姿があった。 「うわ……いつ見てもすごい山。母さん、本当に7千段も登るのかな」  歳の頃10を数えようかというその少年は巡礼地を戴く高い山を … [Read more…]

彼方から

 ソウル・ケルンの混沌の中、ダーネヴィールは石壁の上から首をもたげる。命ある者、それも馴染みのある匂いを感じて。 「ダーネヴィールさん、ここでお逢いするのは久しぶりですね。お元気でしたか?」  抱いた期待通り、馬の霊に乗 … [Read more…]

レイヴン・ロックの花嫁

 武勲を是とする家に生を受けながら、私はある優秀なブレトンの魔術師に命を救われた。それもまだうら若い、可憐な女性に。戦士としての教えを受けてきた身としてはいささか複雑な心境ではあったが、同時にそれが彼女だったことに喜びを … [Read more…]

魅惑の魔術師

 魔術師同士の戦いは向かい合った時には既に終わっている、という説に私は賛成の立場を取る。戦場で剣や斧を振り回すだけが必ずしも優位を意味するわけではないように、単純な腕力で劣る我々の勝負はそれよりも前から始まっているものだ … [Read more…]

カウンター越しの愛をあなたに

「いい加減にもうやめておけ、。お前がどう頼もうと今夜はこれ以上酒は出さないぞ。ほら、店じまいだ」  ソルスセイム、レイヴン・ロック、レッチング・ネッチ――そのバーのカウンターで。スジャンマ、フリンはもちろんマッツェやシェ … [Read more…]